王都シルヴェリア郊外。中央の繁華街や住宅区画からは一線を引いた独特の雰囲気を放つ。石畳で舗装はされているものの住宅は無造作に折り重なり、朽ち捨てられ、日の光を疎らにした通りは時を経て所々が苔蒸して土の臭いを醸す。
中心部から離れる程国の治安維持の目は届き辛い。治安は言うまでもなく、
悪い。
とはいえ、、、
(「こいつ大人しくしろ」なんて本当に言うやつが居るとは、そっちの方がたまげるぜ・・・)
どうでも良いことに関心しながら声の響いた路地の曲がり角から顔を覗かせた。
フードを被って顔を隠した ザ・不審者。その内の大柄な一人はバタバタと動く麻袋を担ぎ上げていた。
(闇が濃いのは光が強い証か、、、皮肉なもんだな。)
「 おい、 そこで何をしている 」
顔を隠した連中の一人がこちらに気づいて声を上げた。低い男の声だった。それに連なって仲間も全員こちらを振り向いた。5人居る。
フリードはいつの間にか身体ごと曲がり角から乗り出していたのに気づいてやべ、と口元で小さく呟くと両手を前に出して制止の声をあげる。
「待て! 待て。ただの通りすがりだ。お前さんがたがこれから何をしようが興味は無いし、邪魔するつもりもない。俺は此処に居るだけだから、さっさと言ってくれ」
苦しい。だが本心でもある。潔いばかりに吐いた言葉に最初にこちらに気づいたフード姿の男は「フン」と息を吐いてフリードに背中を向けた。周りの連中もそれに続いて踵を返す。何とかなったか、とフリードが大きく息を吐
「ブレナン。そいつに遊んでもらえ。壊してしまってもいいぞ」
「!?」
振り向いた瞬間、ドンッ と大きな壁がフリードに激しくぶつかってきて、その身体が通りの石畳に投げ出された。転がりながら体制を立て直すと、壁に見えた巨漢の男が「ウヒッ」と特徴的な唸り声を上げた。
身長は2メートルを越える。横幅ならフリードの倍はある。伸びきったシャツと依れたズボンのみすぼらしい格好のブレナンは不釣り合いにキレイな歯並びで笑った。
「ウヒッ、遊んでいいのかアニキィ?」
嬉しそうにくぐもった声を上げるとシャツの上から豊満な腹が揺れた。胸ではない、腹だ。