201603/21 1話 この世界。 0 アンドール。穏やかな気候と、水と緑に恵まれた果ての大陸の小国である。国民の多くが人間であるが、人種に対して寛容で友好的な他種族が広く受け入れられている。冒険者ギルドや、大地の神タイタニアの神殿を目当てに人の流入は多い。王都シルヴェリア ー酒場「果ての灯台」ー「断る。」真昼間から酒の臭いと冒険者とも荒くれ者とも取れるような連中の太い笑い声が店内に充満している。それらの喧騒も意に介さず。フリード=マクドガルは低い語調で短く吐いた言葉の代わりにと火喰い鳥のもも焼きを豪快に頬張った。「ですよねー。フリードさんならそう言うと思いました。」テーブルを挟んで向かいに座った身なりのいい男はやれやれと仰々しく両手を浮かべて首を振った。手元の木製のジョッキの中身を飲みほした所でフリードは漸くその隻眼の視線を向けた。「今日び不老不死なんて流行らないぞ、ジャン=バルモン卿。」気を使う様子も無く貴族の名を呼んだ。かといってそれを聞いて反応のいい人間が集まる場所ではない。優男風の貴族の名は酒場の喧騒に飲まれた。古来より、「死を超越する秘法」という物は名を変え、形を変えて多くの呪術師や学者達が挑戦を繰り返してきた云わば「神への挑戦」とも言うべき題材である。勿論、フリードが知る限りこの研究に成果を上げた者はいない。「うん。私もそう思います。」ジャン=バルモンはすぐに同意してみせた。「ですが人の欲は限りを知らない。色々な抱えきれない程の物を持ちながらも 人が渇望するものというのはあるんですよ。その内の一つが絶対的な死への恐怖の回避であり、今回中央図書館から持ち出された」「フィオーネの魔本か。」この地方で語り継がれる神話の神々に名を連ねるフィオーネと呼ばれる女神はもともと人間だったとされる。そのフィオーネが神になるまでの道のりを記した書物がフィオーネの魔本であり、その書物自体が強力な魔術の媒介となる為長年シルヴェスタ中央図書館に封じられていた。発覚してから日が浅い事と混乱を避ける為の情報規制が強く、巷では物取りが入った程度に留められている。「そいつぁ大変だあな。」呑気な語調でポケットから銀貨を1枚テーブルの上に置いてフリードが席を立とうとした所でジャン=バルモンは眉根を下げた。「大変ですよ。国の宝である幼い子供たちが多く巻き込まれる。」銀貨から離そうとした指が止まった。口を真一文字に結んで貴族を見下ろす。「・・・何故そこで子供が出てくる?」「フィオーネは幼い少女の姿をしていると言われていますね。 不死の秘法の禁忌に触れようとするならその過程で幼い子供を 呪術に持ち込もうとするかもしれない。」ジャン=バルモンの声音は淡々としていた。主観の差し引きなく、色をもたらさず、只々据えた結論を射抜いた。「気に入らん物言いだな。」呪術も、目の前の達者な男も。「いい冒険者を紹介しますよ。」ジャン=バルモンが微笑む。 PR
200809/26 フリード・マクドガル 冒険者たち 0 「さあ、冒険を始めようか」 フリード・マクドガル 冒険者/30歳/人間/男 /髪の色 黒/目の色 黒 身長177cm/体重70kg 特徴 隻眼、黒髪、黒服 好きなもの 酒、煙草、冒険 嫌いなもの 退屈、騒音、ラクダの涎 ■当て所ない旅の途中でいつの間にか果ての大陸へと迷い込んだ 冒険者。元傭兵。黒ずくめの服装と背中に背負った片刃の大剣が特徴的な 隻眼の男。「道理を通す為ならば、悪魔とだって手を結ぶ」と豪語し、 自分の信念と直感に任せて生きている。